【第59回講習会を開催しました】
今回の講習会はSpecial contents(各地で活躍する外部講師を招いての講習会)として、2/16 千里リハビリテーション病院の吉尾雅春先生にお越しいただき
「脳の基本的な機能解剖と脳画像の見方」を開催しました。
脳卒中のリハはいかに潜在的な能力を見極め、引き出せるかが一つのポイントと言えます。
この潜在的な能力がどのようなものなのかを患者さんごとに見極めるために必要となるのが脳の機能解剖の知識と脳画像の読解です。
現段階での学校教育レベルの学習を前提とすると、臨床では脳の障害された部位名をカルテで確認し、画像で病巣の大きさや罹患時期を判別し、そこから想定される機能障害を予測しながらリハを展開するという流れになるかと思います。
これでもリハを行うことはできますが、吉尾先生の脳画像の読解はもう少し深掘りしたものでした。
例えば、視床と言っても領域で機能(連絡先)が違うため、視床のどの領域が障害されているのか見極めていく必要がある。
上部外側から後方にかけては連合野との連絡。
下部から内側にかけては各皮質領域との連絡。
など、単に障害部位名を把握するのではなく、画像から障害部位のどの領域がやられているのかまでみていく必要があるということでした。
また、「障害領域と連絡がある部位はどこなのか」をわかる必要があり、この知識が「どの神経回路が障害されているのか」を見極めていくことに繋がります。
これができることで、障害領域を中心とした障害された神経回路と、それによって出る身体機能障害が予測できます。
さらにここに、身体機能障害を補える「他の神経回路」で残存しているものを探し出し、
それを利用することで残された可能性を最大限に引き出す介入ができるということでした。
全ての回路や各部位の機能をこの1日で覚える事は困難ですが、徐々に知識を蓄えながら画像を読解できるようになることで、
臨床で患者さんの可能性を最大限に引き出すことができるようなになるということを学ぶ事ができました。
症例を提示して頂きながらであり非常に説得力があるお話でした。
次回はさらに踏み入ったシステム障害と予後予測です。症例もさらに提示して頂けそうです。
楽しみです。
吉尾先生、参加された皆さんありがとうございました。
【講義内容】
セラピストは現象をみていく職業だから、画像を見る必要はない、
という声を聞きます。
しかし、現象の受け止め方や障害の理解はセラピストによって千差万別、現象の分析は必ずしも客観的とは言えません。
その最たる手続きが歩行分析とアプローチです。現状のそれは熱が出たから解熱剤だけを服むということと同じようなものです。
そこに脳の画像が加わることでかなりのことが見えてきます。
上肢の共同運動はなぜ起こるのでしょうか?
そもそも共同運動とは何ですか?
半側空間無視患者が階段をうまく降りれないのはなぜですか?
プッシング現象はなぜ起きるのでしょう??
脳卒中患者の歩行や現象の観察で気づかなかったことも、つまずいている脳のシステム障害の理解も、これからの可能性も、アプローチの仕方もです。
セラピストの責任として、このくらいは理解しながら中枢神経疾患に関わらなければ、と思っていることを具体例を通しながら解説します。
現象の受け止め方や障害の理解はセラピストによって千差万別、現象の分析は必ずしも客観的とは言えません。
そこに脳の画像が加わることでかなりのことが見えてきます。
基底核ネットワーク、
小脳ネットワーク、
視覚経路をはじめとする高次脳機能系、
姿勢制御系等、
脳をシステムとして捉えると、いろいろなことに気づきます。
現象の観察で気づかなかったことも、つまずいている脳のシステム障害の理解も、これからの可能性も、です。
脳画像はそれらのことを教えてくれるのです。
それが分かれば、自ずとアプローチは見えてきます。
このセミナーに参加したら、「片麻痺歩行」という表現はできなくなりますよ。
吉尾雅治先生
千里リハビリテーション病院副院長
医学博士
理学療法士
【略歴】
1974年 九州リハビリテーション大学校理学療法学科を卒業後、
中国労災病院勤務。その後、兵庫・大阪の病院で理学療法士として勤務
1988年~1995年 兵庫医科大学第一生理学教室研究生
1994年 札幌医科大学保健医療学部講師
1994年 大阪学院大学商学部卒業
1995年~2006年 札幌医科大学解剖学第二講座研究員
2002年 博士(医学、札幌医科大学 No.2089)の学位を取得
2003年 札幌医科大学保健医療学部教授
2006年 千里リハビリテーション病院副院長
2007年 死体解剖資格認定(厚生労働大臣 No.8105)
【専門分野】
専門理学療法士(神経 No.99-2-16、運動器 No.3-357、基礎 No.1-186)
認定理学療法士(脳卒中 No.3-13)
日本理学療法士協会 日本神経理学療法学会 代表運営幹事
学会運営審議員 および 元、脳卒中理学療法ガイドライン班長
理学療法ジャーナル編集委員
【著書】
脳卒中理学療法の理論と技術 改訂第2版(メジカルビュー)、
神経理学療法学(医学書院)、
運動療法学総論第4版 および 運動療法学各論第4版(医学書院)、
股関節のみかたとアプローチ(DVD、ジャパンライム) など多数