【動かさない勇気】
臨床上、肩の痛みを訴える患者さんは珍しくありません。
「このままでは関節が硬くなっちゃうから痛くても我慢してしっかり動かしましょう!」
よく耳にする会話かと思います。
しかし、この対応が場合によっては症状を悪化させてしまいます。
その原因は「炎症の有無が判断できていない」ことに尽きます。
特に肩甲上腕関節は構造的に不安定で軟部組織に安定性を求める関節であり、セラピストはその関節包や筋などの軟部組織に対するアプローチが主となります。
故に、特に肩の場合は不十分な評価から炎症状態を把握しないでむやみに軟部組織へストレスをかけると容易に悪化してしまいます。
炎症が強い時期には「動かさない」ことを選択する必要があります。
もちろん完全な不動ではなく最低限の拘縮予防は行います。
炎症状態の判断は、夜間痛の把握や疼痛の質・部位の訴え方・経過、そして筋収縮時やROM時の反応などから総合的に判断します。
可能であれば炎症部位もある程度で良いので特定できればADL指導もより具体的にできますのでなお良いです。
肩に限らず他の関節での応用できますので参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【講義内容】
肩関節は身体の中で最も複雑で難しいというイメージがある関節かと思います。
しかし実は肩関節は「ロジックに介入できる」関節です。
身体の中で最も自由度の高い肩関節ですが、5つの関節で構成され複雑に絡み合う筋によってコントロールされています。
これらは機能的な要素に分解して個々の評価をする事ができます。
また、それらの関係性や身体の治癒過程のタイミングを盛り込んで考察することで、介入のターゲットや徒手的介入の手段を絞りこむことができます。
これらを患者さんの状態に合わせて、的確に提供すればきっちり結果が現れます。逆に的が外れ介入の手段を間違えると変化が出ないばかりか悪化させてしまうこともあります。
今回の「最低限知っておきたい 肩複合体」コースではこれらのことを考慮し、とにかく臨床的で、かつ基本的な評価や介入を臨床家の視点からお伝えしていきます。
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午前中は、そんな肩関節の中でも肩甲上腕関節に絞って基本的な解剖、触診、評価を学んでいきたいと思います。
最も可動域が大きい関節であると同時に、最も可動域制限が生じやすい関節でもある肩甲上腕関節。介入しがいのある関節とも言えます。
これを診れるか否かで肩への介入の質が大きく変わってきます。
今回は肩甲上腕関節の可動域と関節包に着目して評価の方法を提示したいと思います。
肩甲帯に起こる病態のほとんどが肩甲上腕関節に集中しています。
オーバーユースや加齢による退行変性は原因の1つとして考えられていますが、もちろんそれだけが原因ではありません。
この文書を読んでくださっている方ならご存知の通り、体幹や肩甲骨など他部位の機能不全がベースにある事が多いです。
また、一見肩甲上腕関節に問題があるような肩の挙動も実は肩甲骨周囲の問題であったというケースもよく経験します。
午後からは、「肩甲骨」についてのお話をしたいと思います。
肩甲骨周囲筋は単純に単体で機能するわけではありません。一つ歯車が狂えば周りにもその影響が波及しやすいのも特徴といえます。
肩甲骨が正常に機能するには肩甲骨周囲筋全てが機能的な状態でなければなりません。
今回はそれを評価するための臨床的な可動域測定の指標や肩甲骨と肩甲上腕関節の関係性などを中心にお話ししたいと思います。
唐木大輔
【経歴】
理学療法士
BiNI Complex Japan FLOWERING修了
Spine Dynamics療法セラピスト上級認定資格
【著書】
「運動の成り立ちとはなにか(編集:舟波真一、山岸茂則)」に一部執筆
2015年発刊の「BiNI Approach(編集:舟波真一)」に一部執筆
伊藤清悟
【経歴】
理学療法士
BiNI Complex Japan GLOWING修了
Spine Dynamics療法セラピスト認定資格